京都映画盛り上げ隊!
♯7「NPO法人京都観光文化を考える会・都草」久宗圭一さん

答えてくださった方NPO法人京都観光文化を考える会・都草 理事 久宗圭一さん
影響を受けた映画『卒業』ほか…10代の頃、お小遣いをもらって一人で映画を観に行けるようになった時期に観た作品が今でも一番印象に残っています。『卒業』はそんな多感な時期の中でも初めて観た映画で、ストーリーはもちろん、ダスティン・ホフマン演じる主人公を通して描かれるアメリカの富裕層の生活に衝撃を受けました。
ほかにも『メリーポピンズ』『シャレード』『華麗なる賭け』『個人教授』『おもいでの夏』など、映画を今のようなロジカルに客観的に観るのではなく、思春期らしくひたすらにそのムードに憧れ、スクリーンに没入しながら観ていた時代の洋画が心に残っています。

創立の歴史など、施設に関する豆知識

「京都観光文化を考える会・都草」は2007年に京都・観光文化検定試験(京都検定)で「京都通」に認定された人達を中心に設立されました。せっかく試験合格に向けて身につけてきた知識を有効に活かさなければもったいないということで、京都の観光文化の振興と啓蒙に関する事業をボランティアで行ってきています。入会にはどこに住んでいても問題なく、何の資格も無用で誰でも入れます。現在は約400名の会員が在籍しています。


令和5年にリニューアルされた都草のパンフレット

都草には各方面から講演依頼などもあり、私もかねてから映画が好きで、京都の映画文化を盛り上げたいという想いから、映画に関連した講演を行っています。2022年2月には「映画の都・京都 夢と情熱の125年史」と題し、京都府庁の旧議場で定期的に行われている「土曜講座」で講演を行いました。また2023年6月には、東映太秦映画村の相談役である山口記弘氏を迎えた講演を企画、「東映70年の歩み」というテーマで東映京都撮影所の波乱万丈な歴史を語っていただきました。


京都府立京都学・歴彩館で行われた講演「東映70年の歩み」のパンフレット

これまで都草では映画をテーマにした講演や活動はほとんど行われておらず、まだまだ発展途上ではありますが、今後も映画を京都が誇る文化の1つとして認知してもらえるような活動を行っていきたいです。


京都府庁旧議場で行われている「土曜講座」

都草で映画同好会を立ち上げられたとお聞きしました。発足の動機を教えてください

私が映画好きだという話が都草の中で広がっていくうちに、会員の方から「実は自分も映画好きで…」といった話がちらほら聞かれるようになりました。映画が好きな人というのは、誰かと映画について語り合いたいと思っているのに、恥ずかしくて言い出せない方が意外と多い。テレビドラマであれば気軽に話ができるのに、映画となるとなぜか少し敷居が高く感じ、興味があるということさえ隠してしまうようです。ならば映画について自由に語り合える場を作りましょうということで同好会を立ち上げました。

同好会の活動内容を教えてください

現在はまだ第1回を開催した段階で、偉そうなことは言えませんが、ゆくゆくは都草の公式な活動として何かアクションを起こせればと考えています。都草の設立趣旨にも「京都の観光文化に関するボランティア活動を通じて、地域社会の発展に貢献することをめざす」とあるので、いずれは京都の文化である映画・映像産業をバックアップできるような活動を定期的に実施したいです。
とはいえ、最初からそこまで大それたことをやるつもりはなく、まずはとにかく映画が好きな方に集まっていただき、自分が好きな映画について堂々と話していただきたい。映画理論とか難しいことはなしにして、仲間と楽しく映画について話す機会を設けることが、ひいては映画館で映画を観る人の分母を増やすことにつながっていくと考えています。

京都の映画文化について感じるところやご意見があれば教えてください

最近読んだ著書に京大名誉教授の有賀健さんという方が書かれた「京都:未完の産業都市のゆくえ」があります。これは“京都文化”と呼ばれるものの起源がどういうところにあるのかですとか、産業都市としての京都はどういう経緯をたどって今のかたちになり、現状の問題点と解決策は何なのかといった点について論理的・体系的に解説・分析している本です。具体的な内容については実際に読んでいただければと思いますが、本書に京都における第三次産業の拡大・発展の難しさについて書かれており、なるほどと思いました。
映画も第三次産業のひとつです。京都には現在も2つの撮影所があり、アニメやゲームなどのコンテンツ企業も多く存在します。これら産業インフラを併せ持つ都市というのは、東京を除いて京都以外にはありません。今や映画の原作の多くがアニメやゲームであることを考えれば、今後京都の映画が多くの消費者のニーズを捉え、国内外に広がっていく可能性は十分にあると思っています。

京都映画賞についてご意見・感想をお願いいたします

京都映画賞の一環である「優秀スタッフ賞」は、京都の人的インフラをアピールし、表彰する非常にいい賞だと感じています。今後京都映画賞が回を重ねていき、賞自体の権威や意義がますます高まっていけば、受賞した人や作品の権威も自然と高まっていくと思うので期待しています。
私が京都での活動を通して様々な映画関係者と交流していく中で、撮影の現場が苦しい、大変だというお話はよく耳にします。今すぐには難しいとは思いますが、いずれは京都映画賞が貴重な映画技術の保護や伝承といった、具体的なアクションの旗頭になるような存在になっていただきたい。そのためには公的・私的な団体がこの賞をしっかりと支えるような仕組みが必要だと考えており、私も微力ながらその一端を担えれば幸いだと思っています。
今回お話をさせていただき、あらためて私自身、京都と映画のつながりを強く感じました。ぜひ京都映画賞さんには「京都の映画産業の未来ビジョン」を掲げていただき、5年先、10年先に向けた具体的なロードマップを作っていただきたいです。

参考文献:有賀健(2023)『京都:未完の産業都市のゆくえ』新潮社

Information

・団体名:NPO法人京都観光文化を考える会・都草
・所在地:京都府京都市上京区下立売通新町西入ル 京都府庁旧本館2階・旧書記官室
・TEL/FAX:075-451-8146
・開館日:火~金曜日と第1・3・5土曜日の10:00~17:00(ただし祝日は休館)
・公式サイト https://www.miyakogusa.com/